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#はぐくむ・つながる・こどもとおとな #子育てあいっこ

【はぐくむ・つながる・こどもとおとな】第23話「どうしてる?スマホ・メディアと子育て」

2022.10.25 スマートフォン スマホ スマホ脳 子育て 発育 育児

湘南ママたちから絶大な人気と信頼を誇る、認定子育てアドバイザーの宗藤純子先生の子育てコラムです。今回は、『乳幼児とメディア』についてのお話です。

日々の暮らしの中で、便利なツールとして定着してきたスマートフォン。スマートフォンなどデジタルメディアと呼ばれる新しいメディアは、私たちの生活に欠かせなくなっています。

一方で気になるのが、デジタルメディアの登場による子育て環境の変化です。

「乳幼児にどれぐらい見せて良いのか」「発育に影響はないのか」「子どもの利用時間などをどのようにコントロールすべきか」など新たな問題や疑問があがってきています。

そこで、今回は、乳幼児とメディアについて考えてみましょう。

※デジタルメディア:スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、パソコン、テレビ等

世界中で反響を呼んだ一冊「スマホ脳」

新型コロナウイルス感染拡大で、「Stay Home」が推奨され、家で過ごすことが多くなったことにより、メディア機器との接触時間は加速度的に増えました。そんな時に翻訳出版されたのが、北欧スウェーデンの精神科医であるアンデシュ・ハンセン氏の著書「スマホ脳」。

この本では、スマートフォンに依存している現状や、どのようにメディア機器と付き合っていくかなどのアドバイスが記されています。

子ども達の安全を守るためには、まずわれわれ親世代がデジタルメディアを理解する必要があります。

私たちがデジタルメディアとどう向き合い、自分のためにも子どものためにもどう付き合っていくかを考える指針になることでしょう。

わたしたちは1日平均2600回スマホに触り、10分に1回手に取っている。
・現代人のスマホのスクリーンタイムは1日平均4時間に達し、若者の2割は7時間も使うスマホ。
だが、スティーブ・ジョブスを筆頭にIT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。
・世界のIT企業のCEOやベンチャー投資家たちの多くは、わが子のデジタル・デバイスへのアクセスを認めていないか極めて厳しく制限している。何故か?睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下、依存~
最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちにあなたの脳は確実に蝕まれていく……(出版社からのコメント抜粋)

現在の子どもとメディアのかかわり

内閣府では、毎年、『青少年のインターネット利用環境実態の調査』をしています。最近の結果で特に注目すべき点は、低年齢層の利用実態。

0~9歳までの子どものインターネット利用率は令和元年以降増え続け、小学生に至っては、89.1%がインターネットを利用している結果になっています。

【調査結果(一部)】

◆低年齢層の子どもの保護者に、子どもがインターネットを利用しているかを聞いた結果、「インターネットを利用している」は 74.3%、「インターネットを利用していない」は 25.7%
年齢別にみると、インターネットを利用していると答えた比率は、
2 歳で 62.6%、4 歳で72.2%、5 歳で 81.0%、8 歳で 91.9%
子供の通園・在学別にみると
通園・通学前(0~6 歳)は 38.1%、通園中(0~6 歳)は70.4%、
小学生(6~9 歳)は 89.1%がインターネットを利用している
◆ネットの平均利用時間は約110分で、2時間以上使用している割合は43.7%
1歳児では96.5分、2時間以上の割合が38.2%
2歳児さんも平均107.5分 2時間以上の割合45.1%です
◆インターネット利用内容は、「動画を見る」が 94.0%、「ゲームをする」が 59.0%と多く、動画視聴とゲームが多くみられます。

出典:令和3年度 青少年のインターネット利用環境実態調査(PDF版) (cao.go.jp)

乳幼児期におけるスマートフォンの影響

どのような時代でも、発育に重要なのは、「運動」「睡眠」「他者とのかかわり(コミュニケーション)」です。

また、乳幼児期は、視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚の「五感」が豊かに育っていく大切な時期であることを忘れてはいけません。

【参考】2019年、WHO(世界保健機関)は、子どもの健康な発育のために5歳未満の子どもの身体活動、椅子に座りがちな行動、睡眠に関するガイドラインを発表しました。
年齢区分 (1歳未満、1~2歳、3~4歳) ごとに身体活動時間、睡眠時間、テレビなどの視聴時間の指針を示しています
それによると、「健康に育つためには、子どもたちは座る時間を減らして、もっと遊ぶ必要があります」という声明が発表されています。日本だけではなく、世界の乳幼児の身体に対して危機的状況にあると言えそうです。

例えば、赤ちゃんが泣いている時に、「おむつがぬれているのかな?」「お腹が空いたねぇ」などの言葉をかけながら抱っこすると、赤ちゃんは自らが受容されたことを感じて安心感を得ます。

一方で、授乳時に、ママがスマートフォンを見ながら赤ちゃんに接していると、心のくっつきが持てません。また、幼子の機嫌をとるために、スマートフォンを渡して動画を見せ続けたり、泣いている赤ちゃんをたしなめるためにアプリを利用することは、親にとっては非常に便利ですが、赤ちゃんや幼子の安心や心を満たすことにはつながらないでしょう。

【参考】「愛着」とはイギリスの児童精神科医ジョン・ボウルヴィ氏が提唱した考えで、「アタッチメント」とも呼ばれています。その意味は「くっつく」。アタッチメント理論は、赤ちゃんや幼い子どもと育てる人との間にある特別のつながり、くっつきの関係(アタッチメントの関係)があることがその子の生涯に大きく影響するという考え方です。赤ちゃんにとって、不安を感じたり、困った時や泣いた時、無条件で受容してくれる特定の存在がいることで、自分の存在を認識します。そして、そのくっつきを重ねていくことで、基本的な信頼関係が築かれ、赤ちゃんにも自尊感情が芽生えます。この自尊感情が心の根っこにあると、成長した時の心の安定にもつながるとされています。特定の人の存在は母親限定ではなく、父親とでもアタッチメントが築けますし、血縁関係のない保護者や養育者、保育者等とでもアタッチメント関係が築けることが研究でわかってきています。

私が子育て真っ只中だった1993年頃は、携帯電話はまだまだ特別なもので、子育て中の専業主婦には全く縁のないものでした。

今思うと、幼子との貴重な時間を過ごす育児期に、スマートフォンがなくて本当に良かったと思います。

スマートフォンはとても便利なものですが、頼りすぎてしまうと、赤ちゃんや幼子との生活で最も大切な愛着関係の構築に悪影響を与えることにもなりかねません。

ちなみに、保護者の皆さんが小さいときにふれた代表的なメディアといえばテレビ。「テ~レビばっかり見ていると、い~まにしっぽがはえてくる!」というフレーズを今でも覚えているという方もいらっしゃるかもしれませんね。画面が近すぎる場所で見ているとよく注意されたものでした。
また、家族でチャンネル争いをした方も多いのではないでしょうか。

テレビも子育てをする上で善し悪しが語られることが多いですが、1つの画面をみんなで見ることは、同じ空間や同じ時間を「共有」することにつながり対話が生まれました。また、「大人の時間」と「子どもの時間」の境界線があったため、子どもにとって安心な番組を選択しやすかったように感じます。

「スマホに子守りをさせないで」5つの提言

公益社団法人日本小児科医会の「子どもとメディア」委員会によると、メディアとの長時間に及ぶ接触はいまだかつて人類が経験したことのないものであり、心身の発達過程にある子どもへの影響を懸念しています。

そこで公益社団法人日本小児科医会は、スマホに子守りをさせないで!というキャッチコピーのもと、日本産婦人科医会との連名でポスターやリーフレットを製作しています。

5つの提言

1.  2 歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
2.  授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。
3.  すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。
1 日 2 時間までを目安と考えます。テレビゲームは1日 30 分までを目安と考えます。

4.  子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。
5.  保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう。

「エルサゲート」にご注意を

みなさんは「エルサゲート」という言葉を聞いたことがありますか?

エルサゲートとは、子どもにとって不適切なテーマを扱った動画や、それらがYouTubeやYouTube Kids等のプラットフォーム上で家族向けのコンテンツとして拡散されている状況を指す造語です。これに分類される動画のほとんどは、暴力、セクシャリティ、トイレのユーモア、その他の危険又は人々を動揺させる状況や活動を表すもので、表示する際に注意が必要とされています。

内閣府の調査では、4歳以下の乳幼児の動画視聴は、90%以上に達しています。そして、必ずしも保護者が一緒に視聴している状況ばかりではないのが現状でしょう。

とはいえ、子ども達の脳や心に暴力的かつ刺激的な画像を知らぬ間に見せ続けていることは避けたいものです。

そこで、保護者はなるべく一緒に視聴したり、フィルタリングを利用してアクセスをコントロールするなど、安心安全なデジタル環境をつくることが重要です。

デジタルメディアと子どもの視力に関して

国立成育医療研究センターの「コロナ禍の今、あらためて伝えたいお子さんと妊婦さんのためのQ&A」の項目に、「オンライン授業になったり、ゲームをするためにスマホやタブレットばかり見ています。子どもの視力などに影響はありませんか?」という質問がありました。その答えの中には、スマホやタブレットを多用することで近視が進むことが記されています

6歳までのお子さんは、さまざまな視覚の機能が未発達です。感受性の高い乳幼児期から6歳までは、小さな画面ばかりを長時間凝視することで、正常な視機能の発達が損なわれるおそれがあります。そうしますと、将来、眼鏡をかけてもよく見えない、立体的にものをとらえるのが苦手、眼を動かしたり、ピントを合わせるのが不得意、などの困った症状が一生続くことになりかねません。とくに注意したいのは、スマホやタブレットなど、画面の小さいデジタルデバイスを過剰に使用することがきっかけで起こる「急性内斜視」です。「急性内斜視」は、目の内側と外側の筋肉のバランスが崩れて、黒目が内側に寄ってしまう疾患です。放置すると、両眼でものを立体的にみることができなくなってしまいます。当センターの眼科でも、コロナ前からスマホなどの使用により「急性内斜視」で外来を訪れる患者さんが増えています。デジタルデバイスを使う際は、下記のことに十分注意してください。
・2歳までは使わせない、
・6歳までは一人で機器を持たせず家族と一緒に視聴する
・できる限り大きな画面で見る
・画面と目は、25センチ以上離す
・30分使用したら、5~10分休憩をとる
学校に入るころには、視機能の発達はおおかた完了していますが、この時期にスマホやタブレットを多用することで近視が進んでしまうことがわかっています。特に6~8歳頃までは目の奥行き(眼軸)が伸びて近視が急速に進む感受性期間にあたり、悪い生活習慣を続けないよう十分な注意が必要です。近視が進むと、大人になってから緑内障や黄斑変性など、失明の危険のある病気になる確率が高くなってしまいます。
また、「ブルーライトカットのメガネをすると目に良い」と考えられている保護者の方も多いかもしれません。しかし最新の研究では、ブルーライトカットのメガネに眼精疲労などを軽減させる効果はないことが報告されています。デジタルデバイスなどから発せられるブルーライトは、曇りや窓越しの自然光よりもはるかに少ないため、必要のないブルーライトカットメガネを子どもにつけさせることは、子どもの発育に悪影響が出る可能性もあるので注意して下さい。
日本小児眼科学会などの提言はこちら 
(出典:国立成育医療研究センター)

スマホ時代の子育てのヒント

最後に、スマホ時代の子育てヒントのリンクをご紹介します。

就学前の子どもを持つ保護者向けに普及啓発リーフレット(出典:内閣府)
低年齢層の子供の保護者向け普及啓発リーフレット
「スマホ時代の子育て~悩める保護者のためのQ&A~(乳幼児編)」

 

「スマホ時代の子育て~悩める保護者のためのQ&A~(幼児・児童編)」

 

スマートフォン、タブレット、ゲーム機などインターネットとどう向き合っていけばいいのか
デジタル時代の子育てを一緒に考えてみよう! | 安心・安全なインターネット利用ガイド | 総務省 (soumu.go.jp)

子どもたちのインターネット利用について考える研究会(子どもネット研)

◆「乳幼児とスマホ 保護者のためのセルフチェック」

スマホ育児の適切さを手軽に自己診断できるウェブサイトが公開されています。

チエック内容は A.機器利用の時間や場面について B情報の内容と保護者の関わり方 C機器の与え方 D保護者自身の知識や使い方です。

是非確認チェックしてみてください!

乳幼児とスマホ 保護者のためのセルフチェック | 子どもネット研 (child-safenet.jp)

 

デジタルメディアが無くてはならないものになっている現代。まずは、大人がデジタルメディアの正しい知識を持つことが大切です。

そして、子ども達はたっぷりの睡眠がとれるよう、大人たちは子どもの身体と心にふれあって遊び、食べて、たくさん愛してあげてください。

乳幼児期の子ども達は、関心や興味があることを遊びを通じて、さらに探求心へと広がる力を持っています。

主体的に学べるツールの一つとして身近なデジタルメディアを、安心安全に活用している力を持てるよう、見守り支えていきましょう。

 

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ーーー筆者紹介ーーー 宗藤純子(むねとうじゅんこ)

藤沢市在住30年。都内私立幼稚園教諭・主任9年を経て保育士・認定子育てアドバイザーとして乳幼児期から思春期までのこども・家庭教育・支援に約25年以上従事。親子ふれあい遊びや絵本通じて肌と心へのタッチ、子どもはひとりの人であることを伝え続ける。

地域での子育ち親育ち支援サークルと母親のエンパワーによる親子活動・3歳児保育活動等長年主宰し、切れめないつながりと支援を継続。2010年「神奈川県かながわ子育て支援大賞・奨励賞」授与。

・鎌倉市産科診療所「ティアラかまくら」開設当初より閉院まで12年間、外部講師として「こんにちは赤ちゃん」事業、産前産後から思春期。女性・更年期講座等携わる

・「子育ては個(性)育て。己育て」人間教育を軸に行政・PTA家庭教育・子育て支援者向け講演、教育現場・思春期講座等で、保護者向け勉強会など講演講座も多岐にわたり多数。
幼小中学生、年齢に応じた「いのち・こころ・からだ」を子ども達に伝え、対話を継続中

・保育者向け雑誌「POT」あそびパーク012寄稿担当や保育・教育を学ぶ短大大学で客員講師として講演。2019年度より非常勤講師として帝京短期大学『乳児保育』担当。

・株式会社OfficeLadybird代表取締役

◆Web サイト: http://junkomuneto.com

連絡先:omopiyo.love@gmail.com

◆子育ての会ベビーぴよぴよ012連絡帳

 

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